レーヴェンハイム・スコーレムの定理をちょっと使うと、

 「可算モデルだけが持つような特徴」を一階論理で公理化することは不可能であることがわかります。


最も単純な例では、公理系Tが「モデルMが有限集合である」ということを表す論理式の集合であるようにしたいとしましょう。しかもモデルMは有限集合でありさえすればよく、どんなにも大きい有限でもかまわない。つまり、任意のモデルMについて、



となるようにしたいとします。
ところが、上方のレーヴェンハイム・スコーレムの定理により、Tがどんなにも大きな有限モデルを持つので、好きな大きさの基数濃度のモデルを持つことが判明してしまいます。よって、「有限集合である」という特徴は1階論理で公理化可能ではありません。


この例は新井本ではp.55演習問題11に載っています。ちなみに、「元の個数がn以下の有限」というふうに制限すれば、公理化可能です。


 他の例では、「Mは有限生成アーベル群」という特徴も1階論理で公理化不可能です。すなわち、

  「Mは有限生成アーベル群である」

となるような1階閉論理式の集合Tは存在しません。
 なぜなら、有限生成アーベル群の濃度は高々可算ですが、これまた上向きのレーヴェンハイム・スコーレムの定理から、可算無限濃度のモデルを持つ公理系Tは不可算濃度のモデルをも持つのでアウト!になります。